4月17日(ブルームバーグ):自動車などに使うバッテリー(蓄電池)のスクラップを
韓国企業が日本で大量に買い付けている。
原料の安定調達を脅かしかねないと危機感を募らせているのが日本の鉛製錬メーカー。
バッテリーから鉛を取り出して再利用するリサイクル原料の比率が高いためだ。
資源の海外流出だと危惧する声も出ている。

「採算をはるかに超えた高値でどんどん持っていかれる。操業できなくなる寸前まで
いった」。三菱マテリアル の田村和彦・鉛・錫・副産品担当部長は昨夏を振り返る。
「顧客への安定供給は安定した取引の前提。血を流しながら買っていた」。
最悪の時期は脱したとはいうものの足元の価格高騰はロンドン金属取引所(LME)の
鉛価格上昇をしのぐ勢いといい「今後も非常に厳しい状況が続くだろう」と表情は
険しい。

財務省貿易統計によると、廃バッテリーの輸出量が増え始めたのは2005年以降。
国際指標となるLMEの鉛価格が上昇し、それまで主に廃棄物として扱われていたが、
有価で取引されるようになる。特に昨年の輸出量は前の年に比べて約8割増の
7万7000トンと大幅に増加。輸出量の99%が韓国向けだ。
2月の輸出量も7752トンと前年同月を56%上回る高水準が続く。

韓国は主に米国から廃バッテリーを輸入してきたが、米でもリサイクル原料を使用する
動きが強まり、調達先を日本に切り替えた。
韓国非鉄金属協会によると、昨年の米からの廃バッテリーの輸入量は67%減の
3万7255トンと落ち込み、日本からの輸入量が上回った。

■中国の需要増
同協会のキム・スボン理事は「中国の需要増で鉛価格は上昇しており、韓国では
10年以降リサイクル原料による鉛製錬能力を拡大している」と話す。
昨年のリサイクル原料からの鉛生産量は10年に比べて約4割増の18万トンに増加。
「中国ではリサイクル原料を利用する多くの小規模の鉛製錬会社が環境面や規制の影響で
倒産した」という。

国内鉛最大手の東邦亜鉛 は鉛鉱石と廃バッテリーなどからのリサイクル原料の
使用比率が通常は5対5。丸崎公康執行役員は「廃バッテリーの価格が高く採算に
合わない」として「鉛鉱石の使用比率を60-65%に引き上げている」と語る。

三井金属 と三菱マテリアルは鉛鉱石を使用せず、全量を廃バッテリーなどの
リサイクル原料で対応している。
三井金属の環境・リサイクル事業部営業部の高橋隆智副部長は「採算が大幅に悪化し、
数量面においても廃バッテリーの確保に強い危機感を覚えた」と話す。

ただ有効な対策は打ち出せていない。
高橋氏は「安定的なリサイクル原料確保については一企業としては限界があり、対応に
苦慮しているのが実情。環境保護や資源リサイクルの観点で国や電池業界と連携した
包括的な取り組みが必要だ」と訴える。
■有用な国内資源
経済産業省・資源エネルギー庁鉱物資源課の原田富雄課長補佐は「廃バッテリーは
有用な国内資源であり、きっちりと回収して安定的な資源確保につなげなければ
ならないと認識している」と話す。
経産省では鉛製錬メーカーやバッテリーメーカー、自動車メーカーとの間でそれぞれ
有効なリサイクル強化に向けた意見交換を進めているという。
ただ「有価で取引されており輸出を禁止することもできない」として、即座に抜本的な
解決策を見出すのは難しい状況だ。

「鉛の安定供給を考える上でスクラップは鉱山供給と同等の重要性を持つ」と
JOGMEC・金属企画部国際業務課の廣川満哉課長は指摘。
「廃バッテリーだけでなく銅やタングステンなどのスクラップも海外に流出している。
こうしたリサイクルからの資源を確保するには経済原則と相反することが常に生じるが、
コストを誰が負担するかが問題だ」と続ける。

LMEの鉛価格は03年ごろまでは1トン当たり500ドル前後の水準で推移していたが、
現在は2000ドル超へと水準を切り上げた。
価格の安い時期には不法投棄による環境面への影響からリサイクルの必要性が
求められていたが、価格上昇で廃バッテリーを取り巻く環境は一変した。

ソースは
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MKMBDV6JTSEX01.html

http://anago.2ch.net/test/read.cgi/bizplus/1366167370/